【感想ネタバレ】芥川賞「コンビニ人間」はサイコパスの物語なのか?

プロ引きこもり@luckyman0302)だよ。どうも。

とうとう積ん読になってたあの小説を読んでみた!芥川賞の「コンビニ人間」。巷では、

  • サイコパスすぎわろた
  • コンビニ的にいろんな人とあんなことする系のものかと思ってた
  • これは3本指に入る名作だ!(評論家)
..と、いいのか悪いのかの感想が錯綜してて気になったので。で、読んだ結果、ものすごいおもしろかったので感想を書いていくよ。

コンビニ人間のあらすじ(ちょいネタバレ)

36歳未婚女性、古倉恵子。

大学卒業後も就職せず、コンビニのバイトは18年目。これまで彼氏なし。
オープン当初からスマイルマート日色駅前店で働き続け、変わりゆくメンバーを見送りながら、店長は8人目だ。
日々食べるのはコンビニ食、夢の中でもコンビニのレジを打ち、清潔なコンビニの風景と「いらっしゃいませ!」の掛け声が、毎日の安らかな眠りをもたらしてくれる。

仕事も家庭もある同窓生たちからどんなに不思議がられても、完璧なマニュアルの存在するコンビニこそが、私を世界の正常な「部品」にしてくれる――。

ある日、婚活目的の新入り男性、白羽がやってきて、そんなコンビニ的生き方は「恥ずかしくないのか」とつきつけられるが……。

現代の実存を問い、正常と異常の境目がゆらぐ衝撃のリアリズム小説。

引用:コンビニ人間(amazonページ)

話の大筋は上記の通りなんだけど、この小説のなにがおもしろいかって、この小説に出てくる人間の気持ち悪さと、でもそれってけっこう現代あるあるなところ。読んでて「うわー…」って思うんだけど、でも「あれ?でもこういう人いるよな…わかる」ともなってしまう。

つまり、おかしい人だなと思いつつ、おかしいはずなのになぜか既視感がすごいというか。そういう不思議な感覚に包まれるのが本書なんだよね。

コンビニ人間に出てくる人間模様

ここで、メインどころとなる登場人物を軽くご紹介しておくね。

主人公:古倉恵子

コンビニのバイト歴が18年。独身で処女。彼氏なし。コンビニしかできない社会不適合者。小さい頃に鳥が死んで周りの友達が悲しんでる中「この鳥、焼鳥にしよう?」と真顔で話すような少女。喧嘩する友達を黙らせるためにスコップで平然と頭かち割るようなことをやる。

主人公のペット(になる人):白羽

「ネット起業する」が口癖の引きこもりというかニート。結婚だとか社畜だとかをやたら批判するけど自分では生きていけない弱者であり社会不適合者。古倉の家に転がり込んで「餌」をもらう日々を送る。でも意外と口が回る人でもある

その他古倉と白羽の家族

ふたりのことを「異常者」として心配しながら、気味悪がってる。

コンビニの店員仲間

コンビニ店員として古倉がコミュニケーションを取りつつ、自分が社会適合するための参考として「吸収」の対象にしてる人。古倉が「人間」になろうとした瞬間、コンビニ店員じゃなくなる変化を見せてしまう。

と、数少ない登場人物の人間模様が刻一刻と代わり、それぞれに違和感しかない、だけどどこか既視感のある描写を描いていく。本当におもしろい。現代の人間関係の縮図だなーと感じた。

コンビニ人間主人公、古倉恵子やはサイコパスなのか?

この女性は作者をモチーフにしてると言われてるんだけど、確かに読むだけだとサイコパス的な行動が多い。

  1. 死んだ小鳥を周りが悲しんでお墓に埋めようとする中「お父さん焼鳥が好きでしょ?これ焼鳥にしよう?」と平然と母親にいう
  2. 小学校で喧嘩する男子を止めるために、落ちてたスコップで平然と頭かち割る。それを「黙らせたいなら一番合理的」と解釈する
  3. 妹の子供が泣いてあやしてる時に「黙らせるならもっと早い方法があるのに…」と考える
  4. 家に転がり込んできた白羽に与える食事を「餌」と呼ぶ
ぱっと見サイコパスまっしぐらなんだけど、よくよく本書を読んでみると、サイコパスなのかな?と感じてくる。確かにやってることは「異常」と言われるけど、根拠を読むと「普通」に思えてくるからだ。

皆口をそろえて小鳥がかわいそうだと言いながら、泣きじゃくってその辺の花の茎を引きちぎって殺している。「綺麗なお花。きっと小鳥さんも喜ぶよ」などと言っている光景が頭がおかしいように見えた

①の小鳥が死んでる下りで古倉が考えたこと。これって「確かに!」って思わない?僕は思った。小鳥が死んでるのは確かにかわいそうだし、ましてやそれを焼鳥にする宣言は頭おかしく感じるけど、でも奪う命はひとつだけ。

逆に「小鳥がかわいそうな普通なひと」は小鳥の埋葬のために花を引きちぎって殺してる。奪う命はたくさん。

確かにここまでいくと「焼鳥宣言は合理的」だなって思う。生物愛護の考えからしてもね。この小鳥埋葬派の普通の人たちは、それを埋葬するためにまた別の命を奪うことを正当化してる。どっちがおかしいんだろう?と。

こう行った描写をみると、僕らが「こいつやべえ。サイコパスだ」と、異常者と見てる人たちの方が実は合理的に物事を解釈してる気がしてくる。僕らは「ふつう」という曖昧な正義を振りかざしてるだけなのでは?と。むしろこの古倉さんこそ、ふつうな考えをしてる人なんじゃないか…と。

人間や動物は殺しちゃいけない!というけれど、虫や植物は殺しまくりの人、いっぱいいるでしょ。冷静に考えたらそれも異常なんだよな…と。

働かないニート白羽は果たして本当にダメ人間なのか?

この白羽という男は、典型的なダメ人間。

  • コンビニの仕事を心から見下してるのに、コンビニで働いてる
  • 店員の女性や客の女性に手をだそうとする
  • クビになって家賃など払えず追い出される
  • かくまってあげようと古倉が提案すると上から目線で「考えてやってもいい」
  • 自分が働くのがいやだから、古倉に働かせようとする
  • 口癖は「ネット起業をすれば…」←なにもしない
ものすごいダメ人間そう。でも、こういう人いるよね〜と感じちゃう既視感。笑

ただ、この表面だけみるとほんっと救えないダメ人間だなーって思うんだけど、その裏にある思想に僕は共感しかしなかったんだよね。

この世界は、縄文時代と変わってない

「この世界は、縄文時代と変わってないんですよ。ムラのためにならない人間は削除されていく。狩りをしない男に、子供を産まない女。現代社会だ、個人主義だといいながら、ムラに所属しようとしない人間は、干渉され、無理強いされ、最終的にはムラから追放されるんだ。」

ダメ人間だなーって思いながらも、僕はこの言葉を読んだ時「わかる。」と思わずうなずいてしまった。

現代でもムラ社会って確かにあって、それからはみ出ると村八分にあうことは多々ある。それが学校や職場のいじめだったりするでしょ。人たちの基準値から大きくずれた人は「異常者」として扱われるようになる。

  • 残業が普通の会社で定時で上がると白い目で見られる
  • 「結婚しない」ってだけで白い目で見られる
  • 複数恋愛するだけで犯罪者扱いされる
  • 学校に行きたくないってだけで非行少年扱いされる
もっと拡大解釈すれば、皮膚の色だとか、宗教だとかが違うだけで異物としてみられる。中身はともかくとして、それだけで、だ。

例えば学校行きたくない子が非行少年だとしたら、学校に毎日通ってるけど裏ではいじめの主犯…みたいな人はなんなんだろう?どっちが本当の非行少年なのか?でも、僕らは「ふつう。みんなと一緒」であればそれは許されると思ってるわけだ。

生き方の多様性が大事!というけど、多様性は許容されていない

現代は機能不全世界なんですよ。生き方の多様性だなんだと綺麗ごとをほざいているわりに、結局縄文時代から何も変わってない。少子化が進んで、どんどん縄文に回帰している、生きづらい、どころではない。ムラにとっての役立たずは、生きていることを糾弾されるような世界になってきている

これも、わかるー!ってなった言葉。

実際、全然多様性なんて許されてないよね。未だ同性愛者は偏見されがちだし、珍しい病気にかかった人は腫れ物のように扱われるし、恋愛の形だって昔から変わらず、それ以外は許さない。学校にiPadを持っていったら怒られるしね。

建前としての「多様性は大事!」があったとしても実態は過去と全く変わらないんだよね。

僕も、高校のころ不登校になったんだけど、その時の親の反応の仕方は理屈がわからなかった。

ただ学校に行かないだけなのに「発狂してるんちゃうか?」と思うくらい怒ったり泣いたり。でも制服着て外に出れば安心したような表情を見せる。先生や生徒たちも「こいつはやべえ」みたいな雰囲気をだす。本当にめんどくさい世の中だ…と思ってた。そして自分の居場所は学校にも家族にもないから、ヤンキーとつるむようになったり。

ひきこ

ひきこ
そうか、この白羽さんに対しての既視感は、過去の自分だったんだ。

未だにこういう思想は僕自身持ってるけど、同じように共感しちゃう人は多いんじゃないかな。

仕事してない人とか、ニートの人とか、別に悪いことはしてないはずなのに「ふつう」のライフスタイルをしてないからクズだとか社会のゴミとか言われたり。まさにこれが村八分なんだよね。

ふつうではない=異常という無意識的な洗脳

僕らがふつうを好むのは、ふつうが正しいと思ってるから。これは無意識の洗脳に近い。けど、そのふつうが「正しい」とは誰が決めたんだろう?ふつうが異常だったりはしないのだろうか?例えば戦争では人殺しという異常行動が正当化されるような。

このコンビニ人間という作品は「ふつうな人の異常具合を、異常者と呼ばれる人との対比としてリアルに描いてる作品」なんだなって思った。普通の反対はまた別の普通で、それが多いか少ないか?の問題。でも多数決で勝つ方が普通として覇権を握る。

「コンビニ人間」にはふたつの読み方がある

この本は、いわゆる「コンビニ人間側」と「普通の人側」の読み方があるなと。そのどっちなのか?で抱く感想がものすごく変わる。後者の場合、古倉や白羽が気持ち悪くて仕方なくうつるはず。これは、その人がどっち側にいるのか?で自然と決まると思う。

でも前者の場合、つまりもしあなたがコンビニ人間側の場合、古倉や白羽に共感してならないはずだ。僕はこっち側だった。僕にとってはコンビニ人間isノーマルだった。だからこのふたりを気持ちわるがるレビューなどを見ると意味不明だった。

あなたはどっちの目線でこの本を読むだろう?

コンビニ人間と普通の人間、どっちが普通なのか?

この描写を読んでみてほしい。

「店長、今日、からあげ棒、目標100本ですよね! まだ昼ピークの分全然できてなくて、POPもついてないみたいなんです!」

それは大変だ、と泉さんと店長が言うと思ったのに、泉さんが身をのりだして私に話しかけてきた。

「ねえねえ、古倉さん、白羽さんと付き合ってるってほんとー!?」

「いや、あの、泉さん、からあげ棒が」 「ちょっとちょっと、何時の間にそういうことになってたのー!? お似合いなんだけど! ねえ、どっちから告白したの? 白羽さん?」 「古倉さん、照れちゃって全然答えてくれないんだよなー! 今度飲み会やんない? 白羽さんも連れてきてよー!」

「店長、泉さん、からあげ棒が……!」

「誤魔化さないでさ、教えてよー!」

私は苛々として、「付き合ってるっていうか、今家にいるってだけですよ! 店長、そんなことよりからあげ棒がまだ1本もできてないんです!」と叫んだ。

「え、同棲!?」  泉さんが叫び、店長が、 「マジでー!?」  と嬉しそうな声をあげる。

私はもう何を言っても無駄だと、急いで冷凍庫からからあげ棒の在庫を取り出して、両手いっぱいに抱えてレジへと走った。 私は二人の様子に衝撃を受けていた。コンビニ店員にとって、いつも130円のからあげ棒が110円のセールになるということより、店員と元店員のゴシップのほうが優先されるなんてありえないことだ。二人ともどうしてしまったのだろう。

私が血相を変えてからあげ棒を抱えて走っているのに気が付いたのか、トゥアンくんがこちらへきて半分持ってくれて、 「スゴイ、これ、全部作りマスカ?」 と、少しだけカタコトの日本語で言ってくれた。

「そうだよ。今日からセールなの。店の目標は100本で、前回のセールのときに91本売れたから、今度こそ達成させるんだよ。この日の為に、夕方に働いている沢口さんが、大きなPOPを作ってくれたの。それを飾って、皆で一丸となって、からあげ棒を売るんだよ。それが今、このお店で一番大切なことなんだよ」

言いながらなぜか涙ぐみそうになってしまい、トゥアン君は早口の私の日本語が全部は聞き取れなかったらしく、「イチガン?」と首をかしげた。

「みんなが一つになってがんばるってことだよ!トゥアンくん、これ、全部今すぐ作って!」

私の言葉に、トゥアンくんは、「これゼンブ! 大変デスね!」と頷いてくれて、おぼつかない手付きでからあげ棒を作り始めてくれた。  私はファーストフードのショーケースのほうへ走り、沢口さんが2時間も残業して作ってくれた、「大人気! ジューシーでおいしいからあげ棒、なんと今だけ110円!」というPOPを飾り始めた。

この中で、異常者と言われる古倉さんと、コンビニの店長たちはどっちが「ふつう」だろう?

僕は、やっぱりふつうな人である店長たちが異常で、古倉さんがふつうな人に見えて仕方なかった。コンビニ店員としての責任を全うするために一生懸命になってる異常者という正常な人。仕事をほっぽりだして無責任にゴシップに溺れるふつうだけど異常な人。

これって現実でもよくある光景だけど、現実では「周りに流れてない人」が異常になるから、一生懸命に責任を果たそうとしてても他の人の話に乗ってこないと「KY」と呼ばれたりする。

コンビニ人間では、こんな感じで異常者の異常っぽい発言や行動の対比として、ふつうな人の違和感ある行動がうまく書かれていて本当に考えさせられる一冊。引き目で見ると、どっちが異常なひと=サイコパスなのかが本気でわかんなくなるからおもしろい。

1時間くらいあればすぐ読めるボリュームなので、ぜひ読んでみてほしい。きっと何か考えることがあるはずだよ。

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